DDS担体としてのナノ粒子

DDS ナノ粒子
リポソーム 模式図

ナノ粒子の使用による薬物送達(DDS)の研究開発盛んに行われています。ナノ粒子の定義は様々なものがありますが、一般的には100nm以下と定義されます。このサイズの粒子測定には、動的光散乱(DLS)が用いられており、PSS Nicompはこの分野の研究でよく使用されています。 このページでは、DDSに使用されるナノ粒子の研究で、粒子径を制御するためのNicompの活用についてご紹介します。


ISO / TS 27687やASTM E2456ではナノ粒子を100nm以下のサイズ範囲に定義しており、これが最も広く使用されている定義です。もう少し緩やかな解釈では、より大きなサイズにナノ粒子の定義を拡張していて、現在100nmを超えるナノ物質の多くも、一般にナノ粒子と呼ばれています。このサイズの医薬品を開発する目的は、溶解性やバイオアヴェイラビリティの向上、ターゲッティング、薬剤の保持時間の制御、薬剤の血中濃度-時間曲線下面積(AUC)の薬物動態制御などがあります。


ナノ粒子の特性を利用した医薬品の多くは、ナノ粒子のサイズをコントロールすることで、ターゲティングを強化するために開発されました。マイクロフルイダイザーは、ナノ粒子を用いた医薬品のサイズコントロールに最適な分散・乳化装置です。またより能動的な標的アプローチは、健康な組織を回避しながら癌腫瘍のような身体の特定の部分を探して付着させるようにナノ粒子の表面を改質します。ナノ粒子の表面に、ある組織に特異的に結合するリガンドを添加して、相補的受容体に特異的に結合させることができます。Nicomp DLSシステムは、DDSに使用されるナノ粒子のサイズとゼータ電位(表面電荷)の両方を測定する理想的な機器です。



マイクロフルイダイザー

高圧ホモジナイザー、マイクロフルイダイザーは、ナノ粒子の調製を可能とします。一般的なホモジナイザーにない特徴として、サンプルに一定圧を作用させ続け、均一な粒子径分布をもつナノ粒子が得られます。 

またマイクロフルイダイザーはスケールアップ性に優れた装置でもあります。ラボでホモジナイズ処理した、ナノ粒子と同じ条件で、フルスケールバッチのナノ粒子の製剤を調製することも可能です。

生産用のモデルでは、cGMPやPart11にも対応し、多くの医薬品メーカーで用いられています。プロダクション用のマイクロフルイダイザーは、cGMPやCIP/SIPにも対応した、高性能の製造装置です。洗浄や滅菌操作を行い、洗浄の情報や製造パラメータをPart11対応のデータとして記録・保存することができます。

リポソーム エマルション ナノクリスタル 高圧ホモジナイザー
高圧ホモジナイザー マイクロフルイダイザー


Nicomp DLS システム

高分解能DLS(動的光散乱)システムNicomp N3000は、最少0.5nmからの粒子サイズ測定を可能にしたDLSです。独自の分析アルゴリズム、多角度検出器の搭載などにより、数十nmから数百nmのナノ粒子粒子径の分析に最適な手法です。

またゼータ電位(表面電荷)測定機能搭載モデルでは、DDS用のナノ粒子の粒子サイズとゼータ電位の両方を測定し、サイズの情報と、安定性の情報を同時に取得することができます。

Nicompもまた、自動希釈装置の搭載やPart11対応ソフトウェアの選択により、オンラインモデルとして、医薬品製造現場での品質管理用の機器として使用可能です。

動的光散乱 DLS 粒度分布 リポソーム
DLS NicompN3000


APIの微細化

ナノ粒子 DDS 薬剤送達 
ナノ粒子 微細化と表面積の変化

活性医薬成分(API)はしばしば結晶形状です。 疎水性結晶は、親水性の担体で調合することが困難な場合があります。

ナノ結晶のサイズを微細化することにより、溶解速度がネックになる難水溶性薬物のバイオアヴェイラビリティを改善することができます。

左の図は、粒子の微細化と表面積の変化の模式図です。粒子サイズを10分の1にすれば、元の100分の1の表面積の粒子が1000個になり、全体の表面積は10倍になります。薬剤が溶ける速度は、表面積に依存するので、元の大きさの薬剤を使う場合よりも早く溶けることになります。


このアプリケーションでは、薬剤の結晶を狙ったサイズまで微細化する技術と、微細化したナノ粒子の粒子径を精度よく測定する技術が必要です。特にナノ粒子の粒子径を測定し、ガウス分布の表示で確認する場合は注意が必要です。仮に微細化しきれなかった粒子が残存していた場合、平均粒子径をみるだけでは、実際の粒子径とは別のものを捉えてしまいます。Nicompは独自のアルゴリズムの搭載により、複数のピークをもつ粒子は複数のピークにと正確な分析が可能です。


ポリマーミセル

ポリマーミセル DDS ターゲティング
ポリマーミセル

ポリマーミセルもまた、より能動的なターゲティング機能をもつDDSの材料として研究されています。ミセルは、溶液中のポリマーの濃度が臨界ミセル濃度(CMC)として知られている特定の閾値濃度を超えるときに形成されます。ミセルは、サイズが非常に小さく(10〜100nm)、固形腫瘍に対する受動的ターゲティングを改善するという利点を有します。リガンドで表面を修飾することにより、ポリマーミセルを用いて、特定の腫瘍部位への薬物送達が可能になります。

 

Microfluidizerは調製装置として、Nicompは分析装置としてともに数多くのミセルを用いた、APIの能動的ターゲティング技術を開発するプロジェクトで使用されています。



リポソーム調製・測定事例

高圧ホモジナイザー 高圧乳化 リポソーム
リポソーム マイクロフルイダイザー処理数

左の図は、ある組成のリポソーム前駆体(HSPC: Cholesterol: MPEG-DSPE = 3:1:1)を50mMで溶解し、25,000psi でマイクロフルイダイザーで高圧ホモジナイザー処理したものです。

これらは同じ濃度のリポソームですが、初めは白濁していたサンプルが、数回の高圧乳化処理で半透明な溶液に変わっています。

リポソームのサイズが小さくなると、光が散乱されず、直進するようになりますので、視覚的にも粒子径が減少している様子が判ります。

 

この溶液をTEM観察すると、単層または複数の層からなる脂質膜が見られ、高圧ホモジナイズ処理により、リポソームが調整できたことが判りました。


リポソーム DLS 粒度分布 高圧ホモジナイザー
リポソーム DLSによる平均粒子径分析
リポソーム SPOS AccuSizer 粒度分布 高圧ホモジナイザー
リポソーム SPOSによる大粒子濃度分析

これらの図は、調製したリポソームの平均粒子径をDLS(Nicomp)で、粗大粒子数をSPOS(AccuSizer)で測定したものです。プレミックスでは200nm(紫)だったリポソームの平均粒子径が、50nm程度まで減少しています。また1μm以上の粗大粒子の濃度も減少しています。仮に平均粒子径100nmのリポソームが必要であれば、わずか3回(黒)の高圧ホモジナイズ処理で目標を達成できることになります。


OnlineDLS

DLS オンライン 工程管理
DLS オンライン
DLS ホモジナイザー 工程管理
DLSオンライン vs ホモジナイザー

この図は、Nicompのonlineモデルと、この装置を用いて、ある連続運転中のホモジナイザーでDDS担体調製時に取得したデータです。ホモジナイザーの圧力を調整することで、運転時に10-20nm単位での粒子径の調製が可能になり、薬剤のサイズによるターゲティング効果の向上が期待できます。